課題曲は、「松の緑」で、この曲は
杵屋六翁(きねやろくおう)さんが娘の
改名披露の祝賀曲としてつくった長唄である。
娘の立身出世を願ってつくったのが
郭の世界と引っかけていて、1840年という
年代を感じさせる。
きょうの観客は猿三郎さんと
うちの先生のたった二人だ。
この間の発表会の方が観客は多いのだが
こちらの雰囲気の方がはるかに厳しい。
ぴーんとした感じ。
きょうの目標は、浅田真央ちゃんではないが
「パーフェクト」である。
まだ、人前で踊って間違えなかったことは
一度もない。
最初は勢いで踊っているが、
中盤から緊張してきて、頭が真っ白になったり
挙げ句間違えてしまう。
要は、集中力が弱くなってくるからだと
分析している。
真央ちゃんだってバンクーバーで
「あと2点いける」と思った瞬間
ミスってしまった。
ひたすら踊りに集中するしかない。
とはいっても、私ぐらいのが
ノーミスで踊っても技術的には未熟なのだが、
一生懸命教えてくださった先生の手前
言われたことはすべて出し切りたい。
聞き慣れた前奏が流れて、それからは実は
よく覚えていない。
あっという間の出来事で、
間違えなかったつもり。
でも、先生の目から見るといろいろ
あっただろうなあ。
踊りの後、猿之助さん、猿三郎さん、
先生、同じく試験を受けたHさん、私で、かための杯をかわした。
先生から名取りのお扇子、お免状、
名前を書いたお札を手渡されて
「おめでとう」と言われた。
ふと、小学校に入学したときを思いだす。
母に手を引かれて、みんなから「おめでとう」と
言われたけど、何がおめでたいのかわからず
きょとんとしていたこと。
新しい教科書、算数のお道具セットをもらって
「これで勉強するんだな」と少し
背筋の伸びた気持ち。
いや、これから先は長い道のりなので
小学校というより幼稚園かもしれない。
何となく始めた踊りだけど
まさか名取りまでやるとは自分ながら
びっくりだ。
そして、これからの展開を楽しみに
している自分にも驚いている。